小 計 | 0 円 | ||
消費税 | 0 円 | ||
合 計 | 0 円 |
『フリーソフトRを使った医療統計解析入門』メッセージ
医療分野での科学的判断は統計学に基づいて行われます。欧米の医療系大学には統計学の専門家がおり、統計学の授業をしたり、学生や教員の論文作成を支援したりしています。しかし日本では、統計学を使っている教員はいますが、統計学の専門家は少ないのが現状です。また、実際に統計処理を行うにはコンピュータの統計ソフトを使う必要がありますが、統計の理論と統計ソフトの使用法の両方を分かりやすく説明した本は多くありません。具体的な医療データを使った説明書は皆無でした。さらに、SPSSやSASなどの市販の統計ソフトは極めて高額なために、大学のコンピュータで実習をしても、家庭や職場では統計ソフトが無いために使い慣れることが困難でした。
この本は全く初めて統計の計算をする人のために書きました。この本には、最近の欧米誌でよく使われるようになってきた統計用フリーソフト「R」のインストール法から簡単なRの基本機能の説明を載せましたので、読者が各自のコンピュータに入れて使うことができます。Rは世界中の統計学者のボランティアに支えられて開発され、常にバージョンアップも行われているため、最新の統計手法がカバーされ、信頼性の高いソフトとして知られています。RはWindowsだけではなく、Mac OS XやLinuxで使えることも魅力です。
この本では自習により統計学の理論を理解して、論文を作る場合のデータの作り方や統計処理を行えるように構成しています。また、大学などでの授業用教科書としても使えるように、統計学の基本から最新の統計学を網羅しており、実際の医療データを「例」として中山書店のホームページから提供しています。また、復習や自習もできるように「問」とそのデータも提供しています。
Rは「スクリプト」という簡単なプログラムにより統計処理をします。この本に載せたすべての統計処理のスクリプトも中山書店のホームページから提供されています。従って、「例」と「問」については、コピー・アンド・ペーストだけで実習を行うことができます。また、各自のデータを処理する時には、提供されたスクリブトのデータ・ファイル名と変数名を書き替えるだけでいいのです。
私が看護大学院で実際に行っている授業では、20人を対象にこの本を使って延べ22時間の実習をしていますが、市販の統計ソフトSPSSを使ったときの試験では3年間の平均点が89点でしたが、Rに切り替えた年の平均値は95点になり、100点満点も4人いました。スクリプトが実習の障壁になると心配していたのですが、逆に統計処理の手順が明確になり、統計処理の内容理解に役立ったようでした。
今や、統計学と統計処理は医療科学に必須のツールとなっています。ぜひ多くの方々にこの本を読んでいただいて、普段から統計に親しむ環境を構築していただければ幸いです。
2017年3月27日
大櫛陽一
著者の大櫛陽一先生 |
Nakayama Shoten Co., Ltd.